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ここはどこだろう?
私は目覚める。
時刻不明。知らない部屋。電気を消した薄暗い部屋の右奥に、パソコンがある。ディスプレイの光が、ただひとつの灯火のように見えた。その光を中心に周囲を見渡すと、白い壁、カーテン、点滴がある。そして、ベッド。私はベッドで寝ていた。どうやら、ここは病院のようだ。
なぜ、私は病室で寝ているの?
そう思った矢先、ひとりの女性が私に話かけてきた。
「新月さん、大丈夫ですか?どこか痛みはありませんか?」
この女性は誰だろう?
すぐに心の中で、私が回答する。ここが病院ならば、おそらく看護師。薄い黄色の洋服、後ろ髪をひとつにまとめている。声と瞳が優しい。だけど、少し表情が硬い。頬に緊張がある。
「頭が痛いです。ここは、どこ…ですか?」
驚いた。
看護師の質問に答える、私の声が弱々しい。
「ここは桜見晴大病院です」(※1)
「新月さんは、くも膜下出血でこの病院へ運ばれて来ました」
くも膜下出血は、脳動脈瘤の破裂が原因とされ、激しい頭痛が伴う病気。治療後の結果は、大体3通り。社会復帰、後遺症を残す、死亡。どの結果も、ほぼ同じ可能性だと言われている。
嘘でしょう。
信じられない。
そう思い、看護師の表情を確認すると、彼女が嘘をついているように見えない。今いる私の状況、今ある頭痛から考えても、私の現実なのだと自覚する。
頭が痛い。
あの時も頭が痛かった。
自宅リビングでの頭痛、119番通報したことを思いだす。
激しい頭痛。
あの頭痛がくも膜下出血だったんだ。だけど、私は生きてる。くも膜下出血になったけれど、私は生きてるんだ。ここで、はッと我にかえる。
後遺症は?
私の手足は動く?
手が動くか、指が動くか、私は確認する。右手、左手。両手は動く。
足は?
足も動く?
私が足が動くか確認しようとすると、看護師が大きな声で私を止める。
「足を動かさないで下さい!」
だめ…なの?
なぜ?
■後日談
病院で目覚めた時の様子です。
看護師さんから、くも膜下出血だと告げられた時、最初の数秒は受け入れることができませんでした。受け入れたくありませんでした。
だけど、看護師さんの表情、自分が置かれている状況、そして頭痛から、これは現実なのだと。
当時のことを思い出すと、複雑な気持ちになります。様々な「なぜ?」が多かったです。
なぜ、私がくも膜下出血になったの?
私は手術をしたの?
頭部を切った形跡がないけれど、どうやって手術をしたの?
(※1)仮名です
つづく
▼▼▼ こちらの漫画をもとに、著者本人がコラムを書いています ▼▼▼
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