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「足を動かさないで下さい!」
女性の看護師の大きな声。 時刻はおそらく深夜。桜見晴大病院(※1)のベッドに横たわり、右足を動かそうとしていた私は動きを止める。だめ…なの?なぜ? 「……あの?」 私は足の動きを止め、言葉足らずに質問する。 「太ももの付け根からカテーテル手術をしたので、今動くと出血する可能性があります」 看護師は回答する。その回答から、様々な疑問がわきあがってきた。 カテーテルとは何だろう? 手術をした? その間の記憶がないけれど、私は何をしていたんだろう? 今、何時?何日? 私がおかれている現状を、知りたかった。直近の質問から始める。 「あと、どれくらい動けないんですか?」 「あと、2時間です」 「教えてください。手術はもう終わったんです…よね?」 「はい。終わりました」 やはり手術をしたんだ。 …ああ、手術をしたくなかった。 過去の記憶を思い出す。 幼少期、私は手術をした。母は泣いた。「私が悪い。私が気づいてあげられなかった。母親なのに、子供を守ってあげられなかった」あの時から、もう二度と手術台にのらないと自分と約束していたのに、守れなかった。 いや、仕方がない。 くも膜下出血なのだから、手術しないと私は死んでしまう。私が心の中でそう思っている時、看護師がスマホを差し出し、私に告げる。 「新月さん、スマホをお返ししますね」 嬉しい! 「ありがとうございます」 私はスマホを受け取り、検索をした。検索ワードは「カテーテル 太もも くも膜下出血」そして、検索結果を確認してすると「脳内カテーテル手術とは、脳内血管手術ともいい、足の付け根にある大腿動脈から管を挿入し、血管の中から脳の病変部へ到達する手術です」 驚いた。 今は、こんな手術もあるんだ。すごい。おかげで、私は頭蓋部を切らずにすんだ。今、鏡はないけれど、おそらく、私の姿形は以前と変わっていないと思う。さらに、私はスマホ検索をする。 あとは…
知らない言葉、わからない世界の境界線に突然行ってしまったので、スマホの存在には助けられました。ほぼ、ほぼ毎日のようにスマホでググっていました。 そして、ほぼ毎日ググるうちに、別の視点も入手ことになります。 (※1)仮名です
つづく
▼▼▼ こちらの漫画をもとに、著者本人がコラムを書いています ▼▼▼
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