その後、手術を終る。今は、病院のベッドに横たわり、私はスマホを食い入るように見つめている。
くも膜下出血になった原因を知りたい。
「くも膜下出血 原因」「脳卒中 原因」言葉を変え、様々な言葉でスマホでググる。複数のネット記事を読んだ。ネット記事には、次のように書かれていた。
—-脳卒中は、脳梗塞、脳出血、くも膜下出血の三に分けられます。脳卒中の原因は、高血圧や糖尿病など同じように、食事、運動不足、ストレス、喫煙、過剰な飲酒などの日常生活習慣に原因があるため、「生活習慣病」とも呼ばれています。普段の生活を見直せば、脳卒中は予防することができます—-
記事にあるのは、もう既に知っている情報ばかり。
そして、私には該当しない情報ばかり。
私は、不健康な生き方をしていない。
食事。
過去、漢方薬の医師から、食事療法の指導を1年間受けてきた。もう長い間、健康的な食事をしてきた。だけど、実際は違うのかもしれない。時々ジャンクフードも食べているし、徹底をしていない。徹底すると、窮屈な気持ちになるから。とはいえ、毎年の健康診断では、いつも正常値。
運動不足。
それは考えられない。かつて私は運動量過多だった。毎朝3時に起床し、週3回筋トレ、週3回ジョギング、週末登山。膝の故障により、医師のアドバイスに従い、今はゆるふわ運動。ゆるふわと言え、ほぼ日で運動をしているので、運動不足はやはり考えにくい。
ストレス。
これも考えにくい。私は、メンタルケアに最も時間をかけている。初期の鬱症状であれば、1週間のセリフケアで、私は私を治療することができる。長い期間、自分観察をし、入手したメンタルケア方法。私専用の方法のため、他者に有効かどうかは不明なのだけど。
喫煙・過剰な飲酒。
私の人生に、喫煙も飲酒もない。喫煙をしたこともないし、少量の飲酒でも体調を崩すので、一口しか飲まない。いや、飲めない。
私の日常は、健康的な生活習慣。
人生で最も大きなリターンは、健康。
だから、時間と労力を投資してきた。だけど、くも膜下出血になった。
何がいけなかったんだろう?
何を見落としたんだろう?
わからない。
私が、なぜくも膜下出血になったのか、わからない。
頭が痛い。
スマホが重い。スマホを支える手首が、疲れてきた。明日、医師に確認しよう。
「新月さん、もうそろそろ」
看護師が、私に声をかける。
看護師を見ると、彼女の表情から患者を気遣う気持ちが伝わってくる。…私はくも膜下出血なんだから、休まないと。
突然、過去の記憶を思い出す。
そういえば、私には、くも膜下出血で亡くなった叔父がいる。それを看護師に告げると、彼女は目を見開いた。
「新月さん!」
翌朝。
私は、私の主治医・斎藤先生と初めて会う。彼が私に告げる。
「看護師から聞きました。くも膜下出血の家族歴がある場合、ご家族もくも膜下出血になる可能性があるんですよ」
え?
遺伝?
主治医の言葉に、私の思考も身体も数秒固まる。
■後日談私のくも膜下出血の原因は、遺伝的要因の可能性がある。
驚きました。
本当に驚きました。遺伝の可能性があるなんて、知りませんでした。考えてもみませんでした。
…いや、知らないから、考えようもないのですが。
その後、妙に納得もしました。遺伝だから、私の今までの努力が追いつかないのも仕方ないよね…と。
つづく
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